サブリーダーの、相模原東RCの萬田と申します。
皆さん、今神崎パストガバナーからお話がありました通りに、職業奉仕は肩の凝るような話にしたくないと思っております。
その辺の所は、宜しくお願いいたします。
3月11日、千年に1度の大災害が起きました。
我々第5グループの会員が、その翌日の12日に会合をやっている場合ではないと、中止をしました。
色んな状況の中で、亡くなられた方々・被災された方々に、代表してお見舞いとご冥福を申し上げます。
皆さんにちょっと質問したいのですが、長寿企業と言うのは2780地区の中のには何社かいらっしゃると思うんですが、例えば100年、200年以上続いてるとか、この中でいらっしゃいますか?
・・・120年、そうですか。
調べれば、結構あると思うんですね。
これから始めるのは、「長寿企業における職業奉仕の現状」という状況なので、私なりに色々調べました。
最終的に、こじつけになります。
そういうところにお許しをいただいて、話を進めていきたいと思います。
仕事を通じての奉仕。
これは、ライオンズクラブが「自由・知性・愛国を目標に 明るい社会に身近な奉仕」を合い言葉にしております。
ロータリーは、はっきりと「仕事を通じての奉仕」を掲げて活動をしております。
仕事を通じての奉仕は、簡単に言えば「我々が普段携わっている自分の職業を通じての奉仕実践」がロータリーではないでしょうか?
地区協のアレにもロータリーの定義が載っておりますので、読ませていただきます。
ロータリアンが職業を通じて奉仕をする根拠は、『標準ロータリークラブ定款第4条』の綱領に
ロータリーの綱領は、
「有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹し、これを育成し、
特に次の各項を鼓吹、育成する事に有る。」
【第1】
奉仕の機会として知り合いを広める。
【第2】
事業及び専門職務の道徳的水準を高める事。
あらゆる有用な業務は尊重されるべきであるという認識を深める事。
そして、各ロータリアンが業務を通じて社会に奉仕するために、その業務を品位あらしめること。
【第3】
ロータリアンすべてが、その個人生活、事業生活に常に奉仕の理想を適用する事。
【第4】
奉仕の理想に結ばれた、事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって、国際間の理解と親善と平和を推進する事。
・・・となっております。
これだけでは中々私にも理解できませんでしたので、いただいた資料の中から分かりやすく説明をさせていただきます。
その資料には、
{ロータリーでいう職業奉仕は、自分の職業に対して誇りと愛情を持って、経営には最大の努力を払い、単なる金儲けばかりを目的とするのではなく、ロータリーの精神とか、奉仕の精神とか、或いは「4つのテスト」の精神を汲み入れて、企業の道徳水準を高め、その職業を通じて社会に貢献する。}
更に、「この信条を同業者及びその他の友人に勧め誘うこと」と、解説されております。
「誇りと愛情」とは、自分の職業が社会生活に関連して、かけがえのない重要性を持っている事を認識することによって生まれてくるもの。
「経営に最大の努力を払う」とは、人間の生き甲斐・幸せというのは、この利己心を出来る限り、抑えていく中で見出せるものであるということを、手続要覧の社会奉仕に関する1923年の声明『23−34』に、次のように明示されております。
ロータリーの基本には、一つの人生哲学があり、それは利己的な欲求と義務及びこれに伴う他人の為に奉仕をしたいという、感情との間に存在する矛盾を和らげようとするものだ。
「最もよく奉仕する者、最も多く報われる」という実践的な倫理原則に基づくものだ。
そして「4つのテスト」とは、
「ロータリアンはこのロータリーの奉仕の哲学を受け入れ、個人々々がそれぞれの職業及び日常生活において、この奉仕の理論を実践に移すこと」とあります。
実践に移す為には、ロータリアンが行動の指針にすべきは何かと言えば、それは「4つのテスト」であります。
●真実かどうか
●みんなに公平か
●好意と友情を深めるか
●みんなの為になるかどうか
この「4つのテスト」に照らして事業を経営してもらいたいというのが、ロータリーの考えであります。
この職業奉仕の考え方は、シカゴの世相を説明させていただきます。
本日のリーダー・神埼パストガバナーが訳された、今年度の『ロータリーの友』1月号、皆さんご覧になりましたか?
その中に、その時の世相が書いてございました。
「シェルドン・・・・忘れ得ぬその名」の中から、当時のシカゴは「飼い主に注意せよ」である。
「飼い主に注意せ」よとは、『売り主に騙されないように注意しなさい』と言うことであります。
シカゴの町は、雨が降るのと同じくらいに『正義』を渇望していたのです。
粗悪な商品を売りつけることが、日常茶飯事でありました。
昔のテレビ放映で『アンタッチャブル』はご存じですか?
これがその時の世相が表しています。
「禁酒法」「賄賂」と、かなりのブラックに近い世の中であった事が、想像されると思います。
1910年、シカゴで開催された全米ロータリークラブ連合会において、チェスリーR・ペリー氏が
{職業と兄弟愛は調和するでしょう。
「買い主注意せよ」という言葉を追放しましょう!という提案をいたします。
皆さんが「健康であり過ぎる」ということがないのと同じ様に
「役に立ち過ぎる」という事も無いのです。
皆さんの職業に良心を調合しましょう。
みなさんの優れた頭脳に少し愛情を加えましよう。}
・・・と言う話をされました。
その話を拝聴したシェルドン氏は、ロータリーの第2回大会で企業経営問題委員会の委員長として、委員会報告書の中で「最も良く奉仕する者、最も多く報いられる」という考えを発表・報告されています。
今迄、ロータリアンは黄金律や商業上の悪弊について、多くから語られていましたが、これこそがロータリアンが探し求めてきたものでありました。
「最も良く奉仕する者、最も多く報いられる」
このスローガンは、ロータリーの標語として受け入れられ、職業奉仕を醸成させ続けてきました。
大体これが、私の『職業奉仕』としての前半の話でございます。
日本の話を少しさせていただきたいと思います。
その代わり、かなり回り道をしますので、お許しいただければと思います。
日本史から見てみますと、
古墳時代(西暦470〜500年)にかけて、朝鮮北部から漢字、儒教が伝来しています。
仏教が百済から伝来したのが(西暦538年)です。
聖徳太子が摂政に就いたのが(西暦593年)。
この年から飛鳥時代に入り、(西暦710年)迄続き、
それ以降、
奈良時代 (西暦710年〜西暦794年)
平安時代 (西暦794年〜西暦1192年)
鎌倉時代 (西暦1192年〜西暦1333年)
南北朝時代 (西暦1333年〜西暦1392年)
室町時代 (西暦1338年〜西暦1573年)
戦国時代 (西暦1467年〜西暦1590年)
安土桃山時代(西暦1573年〜西暦1603年)
江戸時代 (西暦1603年〜西暦1868年)
明治時代 (西暦1868年〜西暦1912年)
・・・と続く訳です。
全般的な日本人としての考え方は、
孔子の儒教の思想「仁・義・礼・智・信」の教えから来た所に、重きをなしております。
【仁】とは、人間が守るべき理想の姿である。
自分の生きている役割を理解し、自分を愛すること、そして身近な人間を愛し、ひいては広く人を愛する事である。
単純に情け深いのではなく(単なる同情ではなく)、自分には厳しく周囲には寛容に、かつ正義に基づいた慈愛を持って接する事が大切である。
織田信長にはこの点が欠けており、敵ばかりではなく、見方にも非情で有った為、天下統一ができなかったと言われております。
【義】とは、人の歩んでいく正しい道の事。
義をおろそかにすることは、道を踏み外す事になる。
仁を実践する基本として、義を貫くことが必要である。
本当に人を愛し思いやる生き方は、勇気を持って正義を貫いてこそ成り立つ。
良い例といたしましては、上杉兼信が川中島の合戦の時、今川・北条側に塩の供給を断たれた武田信玄に、塩を自国から供給し、義を貫いた話が有名でございます。
【礼】とは、人の世に秩序を与える礼儀礼節は、仁を実践する上で大切なことである。
親や目上の人に礼儀を尽くすこと、自分を謙遜し、相手に敬意を持って接する事が礼、場合に応じて自分を律し、節度を持って行動する事が節といえる。
優秀な軍師諸葛孔明を迎える際に、三顧の礼は三国志の有名な故事でございます。
【智】とは、人や物事の善悪を正しく判断する知恵である。
様々な経験を積むうちに培った知識はやがて変容を遂げ、智となって正しい判断を支える。
より智を高めるには、偏りのない考え方や、物事との接し方に基づいた知識を蓄える事が必要である。
儒教では中庸といって、よいバランスを保って生きる事が、大切とされております。
【信】とは、心と言葉・行いが一致いたし、嘘がない事で得られる信頼である。
嘘の為に一度損なわれた信頼を、取り戻すことは難しい事である。
例え、仁なる生き方を実践していても、人に信頼されないことには社会で生きてはいけません。
信頼は、全ての徳を支えるほどに大切であります。
二宮尊徳は【仁・義・礼・智・信】のという五常の徳を実践するものであれば、その心を担保にお金を貸す金融の仕組みを作った。
この制度は、後の「信用組合」の原型となったと言われております。
この五常の徳の中には、「人に対して持つ心」と「自分に対して持つ心」と「外面内面・両方一体になって人の心は完成する」と言う事が書いてあります。
このような教えは「人々が善悪をわきまえて、正しい行為をなす為に守り従わなければならない」と云う道徳律であります。
江戸時代に入り、商人が「生きるか死ぬか」のあることを、全ての商人と言っても良いというほど、経験をしました。
その経験の反省の上で遺されたものが『口伝』であり、家訓であり、遺言であり、商人としての心構え『道徳律』でありました。
その「ある経験」とは、世の中が太平の時代になった江戸時代において、金融業を営んでいた商家は挙って、利息一割と良い条件で、大名貸を中心に商いをしていましたが、台所の大変な大名は年貢をあてにして、商人から多額の借金をし続けます。
最初は大名も大人しく返済をしていましたが、返済不能となってきた時に大名達も考え、色々と返済延期の手を打ちます。
一つに、『扶持米』を商人に与え、藩に縛りつけます。
扶持米は「主従の関係を結んだ」と判断される要因になるとは知らず、この扶持米に引っかかってしまいます。
お上に訴えても、主従関係が結ばれていると判断され、訴訟自体、受け付ける事をしませんでしたので、その当時の商家は8割ほど、ほとんど倒産して、その時に生き残った商家は商売の怖さを痛感するわけです。
そういう背景の中で経験を基にし、家を滅亡させない工夫をしたものが、家訓等として遺されました。
現在、日本の企業の寿命が40年前後と言われている中で、もっと長いという方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の長寿企業が断トツに残った理由は、次にように言われております。
日本国内では革命は無く、他国からの侵略も受けず、植民地にもされず、四方、海に囲まれ、外敵に守られた、鎖国、戦時中もGHQ占領下でも、手に技術を持つ伝統ビジネスの職人は大切にされ、技能を皆で、共有して受け継ぐ世代交代を、上手くやってくる事が出来ました。
しかし、かつて植民地化されている国や、大きな戦争や内乱で政治体制が激変した国には、老舗が育ちませんでした。
激変した国と比較してみますと、日本企業が驚くほど多く存在しています。
これは、世界で200年以上の長寿企業の数は、2007年の数字であります。
●ドイツ 800社
●オランダ 200社
●アメリカ 14社
●中国 9社
●台湾 7社
●インド 3社
●日本 3000社
日本の上位企業は、
1)『金剛組』 大阪市/木造建築/西暦578年創業(古墳時代:1433年目)
2)『池坊華道会』 京都市/生花教授/西暦587年創業(1424年目)
3)『西山温泉慶雲館』 山梨県/旅館経営/西暦705年創業(1306年目)
更に1000年以上の歴史の会社は、5社もあるという話です。
?)『塩瀬総本家』 東京都/和菓子/1349年創業(室町時代の初期:662年目)
*「塩瀬総本家」の家訓
塩瀬は室町時代初期の1349年、禅宗の高僧と共に来日した弟子の林浄因(りん・じょういん)が、奈良で「あん入りまんじゅう」を売り出したのに始まります。
「材料落とすな、割守れ」
「割り」とは材料の配合で、「素材にこだわり伝統の配合を守り、一級品を作れ」ということです。
今は35代目まで続いておりますが、35代目の母の34代目は、京都の両足院という寺に散在していた、歴代当主の墓の整理・修復を行ったそうです。
*「金剛組」の家訓
聖徳太子の命により、大阪の四天王寺を百済から招いた柳(金剛)重光によって建立。
寺院が完工後、「今後、あなたの家系は子孫代々にわたって四天王寺を補修し、管理する役目を担いなさい」と聖徳太子の命を受け、柳(金剛)重光は故郷に帰らず、その子孫らは寺の建築を家業として引き継ぐようになっております。
金剛組を1400年間、支えてきたのは「基本に忠実に」。
金剛組は建築の際、天井や床下といった「見えない所」に投資する。
日本では、「金剛組が揺れれば、日本列島が揺れる」という言葉まである位でございます。
江戸時代中期に、32代目の喜定が亡くなる間際に残した「職家心得之事」16条が家訓。
『儒・仏・神・三教の考えをよく考えよ』
1)曲尺を職学の稽古と一緒にあらゆるものが備わる五行の定神と
神社仏閣から民家に至るまで儒仏神三教の考えをよく考えわきまえなさい。
これが職家第一の誇りである。
2)主人の好みに従え
3)修行に励め
4)出すぎたことをするな
5)大酒は慎め
6)身分に過ぎたことはするな
7)人を敬い、言葉に気をつけよ
8)憐みの心をかけろ
9)争ってはならない
10)人を軽んじ威張ってはならない
11)誰とでも丁寧に接しなさい
12)差別をせず丁寧に対応せよ
13)私心なく正直に対応せよ
14)入札は正直な見積もりを提出せよ
15)家名を大切に相続せよ
これは、自分で判断出来ない時は、親類に相談し万事きめなさい。
私は普段から病気がちな為、職家の心得の必要なことを書き置く。
つまり、忠孝者は言うまでもなく家名を大切に相続し、妻を求め、子孫を残して子供の養育をきちんとし、常に保護しなさい。
そして、長寿を保ち仏神に祈る心を持って、早く仏の心を起こして大善知識を持って一つになり、弥陀の本願を授かり、悟りを得て罪業は離れ、勇気の心思い、今から後世を楽しむことが肝要である。
16)先祖の命日は怠るな
先祖の霊年回忌の命日には、怠ることなく焼香を捧げ、仏事を取り行って、今の世の身分に応じたやり方を心得なさい。
そして、日本で長寿企業が多いのは京都が多い。
1)『松前屋』 昆布加工小売販売/西暦1392年創業(南北朝時代:619年目)
そもそも「自分の店は格式が高い」などという意識は捨て、全てのお客に対して「頭を下げる」事から始めました。代々伝わる家訓は特にないが、代々の主人が心得るべき基本は、古くから儒教の教えで有る「仁・義・礼・智・信」という5つの徳(五常)である。
これらの徳がなければ、家は栄えない。
2)『十松屋(とまつや)福井扇舗』 西暦1394年創業(室町時代:617年目)
15代目・福井藤兵衛氏
「家業というものは全く私個人のものではなく先祖からの預かりものです。家業によって、そこに働く者全てを育み、商品を通じて社会に役立つ義務があるわけです。そして、無事に次代に伝えていかなければならぬと心得ています。」
3)『エイラクヤ』 綿織物専業卸商/西暦1615年創業(396年目)
●社員教育の徹底
●仕入先にも得意先にも感謝の心
●「先祖があって我々がある」という考え方が基本にあり、毎年正月に全社員で歴代店主の墓参り。「商売は先祖からの預かり物」という意識をもっている。
4)『七味家本舗』 西暦1655年創業(356年目)
13代目当主・福島仁氏さんは
●千年の歴史をもつ京都のお陰。
●有名な清水寺の前にあること。
●先祖が陰徳を積んでおいてくれたこと。
「のれんに感謝すれども頼らず、今日一日の商いが百年ののれんを築くものであることを肝に命じ、後世に伝えたい」
5)『中山人形店』 西暦1657年創業(354年目)
10代目当主・中山庄三郎氏
「勤勉でなければいけません。節倹しなければいけません。細かい心遣いをしなければいけません。等々中々実行できません。できてもできんでも、こういう心がけでいるということは必要だと思います。」
同社には「商人の教則」が伝わっている。
《第18条》常に公益を思い、また慈善の心を思い、また慈善の心を存すべし。神仏の信仰もまた怠るべからず。
《第22条》金を貸しても借りてもいけない。また自分一代で店を潰すことになるなら、早く死んで次の者に代を譲ってしまえ。
かなり厳しい家訓だと思います。
6)『象彦』 高級漆器/西暦1661年創業(350年目)
9代目・西村彦兵衛氏
「蒔絵など高価な漆器は沢山売れるものではない。象彦は安物漆器には手を出さず、品質一本で商ってきたので、それが老舗象彦の信用を高めたのだと思う。老舗は、信用・技術・知名度において、素晴らしいものを持っているが、伝統の殻に閉じこもって、新しいものへの挑戦に消極的な面がある。細く長く続いているだけでは価値がなく、永く栄えて続いていくのが真の老舗なのではないだろうか。何百年と続いている老舗は、常にその業界の最先端を進んでいる。
そうでなければ何百年もの間、一つの企業が継承していけるはずがない。
時代と業界の最先端を歩むことは、その企業を率いるトップに先見の明と進取の気性や勇気ある決断を必要とする。」
7)『福田金属箔粉工業』 金属箔・金属粉/西暦1700年創業(311年目)
8代目当主・福田氏
経営のモットーは創造―――絶えざる創造
これからの企業が次代への貢献という社会的使命を負っていることはもちろん、「生活環境の保全という社会的責務を担っていることを重視しているゆえんであろう。」
8)『外与(とのよ)』 繊維総合商社/西暦1700年創業(311年目)
「心得書」といわれる家訓がある。商いに対する大きな特徴の一つは
「自然の成り行きを大切にすること。値合は自然のなりゆき、損もあればまた益もあるべし、高下の冥利の外に始終平均のものと知るべし」
もう一つの特徴は、「利他自利」という、相互繁栄の精神である
「世の中は相互に利益をえてこそ、すべて円満にゆくもの。つまり他人に利益を与えて、自分も適当な利益を得る事が大切」と、昔から折に触れて社員に言い聞かせている。
この「自然体」と「利他自利」の理念がそのまま生かされて、今日の繁栄がある。
9)『鶴屋吉信』 京菓子/西暦1803年創業(208年目)
同社に代々伝わる家訓五条
・顧客を第一にして家業に励むこと。
・よいものをつくるために、材料・手間・ひまを惜しまぬこと。
・常に創意と工夫・進取の精神を忘れぬこと。
・主人たるものは商いを第一に、けいこごとを慎むこと。
・家名を辱めることなく、世の為人の為に尽くすこと。
その他の家訓
*『大丸』創業者の遺訓 下村右衛門正啓(1746年:延享5年没)
主人心得の巻
1)天下の御法度を承知して、かたく守ること。
2)天下の御法度であるけれど、
「これぐらいのことは世間では誰でもするから構わない」などという者がいるが、
それは私が大嫌いなことである。
3)「これは世にしられてないことだから構わない」と考え、
道理に合わない事をするのは、険悪というべき最も悪い事で、
固く慎むべきことである。
4)自分が規則に反していて、下の者に規則を守らせようとするのは、
とんでもないことである。
固く心に決めて、そういうことはすべきではない。
5)策をめぐらして人を説得しょうとするのは、なおさらいけないことである。
自分の言動について、いつもこれは策略ではないか、
正道にかんっているのかと、省みながら気をつける事が大切である。
6)第一に心を正しく持ち、道理に合っているかどうかをよく考えて、
自分が勤めるべき事は余念なくしっかり勤めて、その結果をあせらず、
あとは自然に任せておくべきである。
勤めが熱心なあまり、他へつまらぬ詮索をするようになると、
そのうちに独断が出てきて、前の成果をすべて無にするものである。
この事をよく心得ておくべきである。
7)ただ、人が過ちをなかなか改めず、差し支えのないことをも恥ずかしがって、
過ちをごまかして言いくるめようとするのは、たいへん心のせまいことである。
私は「過ちを恥じない」ということを第一にこころがけてきたので、
自分の過ちを隠そうとする人にはいやしさを感じる。
そのような人には大事な頼み事はしない。そう心がけている。
8)主人たるものは、自分の方から誠実さをもって人を使う事が大切である。
主人は不誠実な気持ちで人を使っておいて、
奉公人には誠実をつくさせようというのは、あってはならないことである。
9)律儀ほど身の為に良いことはない。
人があほうと云おうと何と云おうとかまうことはない。
律儀である人ほど良い人はない。聖人、君子はみな律儀を第一とされたのである。
*「近江商人」と三方よしは(売り手よし、買い手よし、世間よし)
宝暦4年(1754)に70歳になった、麻布商の中村治兵衛宗岸が残したものだそうでございます。
平成9年になって、詳しい直筆の書き置きが発見されたそうです。
「たとえ他国に商売に出かけても、
自分の持って行った商品をこの国のあらゆるお客様が着ていただけるように、
自分の事よりも先ず、お客様が喜んでいただけように、高い利益を望むことなく、
その時の天の恵み次第と謙虚に考え、ただその地の人々を大切に思うようにしてする事。
そうすれば心も安らぎ、身体も無事息災で、神仏の信仰も厚くなる。
地方のその国に入る時は右のようなことを第一に心がけること。
貧しくなるのも、自分の心のありかた一つに起因する。
悪心がおきれば、家を保つことはできない。
家を継いでから自分の子に譲るまでには、わずかに30年の月日しか残されていない。
その期間は良く行動を慎んで、じぶんは奉公のみであると考えるべきである。
信心や慈悲の心を忘れないで、心を常に快適にしている事が大切である。」
・・・というのが直筆でございました。
*『松下電器産業』(現パナソニック) 松下幸之助
綱領(1929年)
産業人たる本分に徹し
社会生活の改善と向上を図り
世界文化の進展に
寄与せんことを期す
「基本は経営理念」
私達は、経営理念に基づき事業を進めてきました。
経営理念とは、事業の目的と事業活動の基本的な考えであり、
「綱領」「信条」「私達の遵奉すべき精神」に力強く簡潔に表現されています。
経営理念に基づき仕事を進める事は、時代の推移、事業規模、事業内容の変化にかかわらず不変であります。
「企業は社会の公器」という考え方がございます。
一般に、企業の目的は利益の追求にあるという見方がある。
たしかに利益というものは、健全な事業活動を行っていく上で欠かすことのできない大切なものである。
しかし、それ自体が究極の目的かというと、そうではない。
根本は、その事業を通じて共同生活の向上を図るという所にあるのであって、その根本の使命をより良くし遂行していく上で、利益というものが大切になってくるのであり、そこの所を取り違えてはならない。
そういう意味において、事業経営というものは本質的には私のことではなく、公事であり、企業は社会の公器である。
もちろん、形の上というか法律的にいわゆる私企業であり、中には個人企業というものもある。
けれども、その事業なり事業の内容というものは、すべて社会につながっているもので、公のものなのである」という考え方をされております。
*『ジョンソン・エンド・ジョンソン』
皆様の「健康」のためにできること。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは様々の活動を通して皆様の「健康」に貢献します。
我が信条(1943年 ロバート・ウッド・ジョンソンJr起草)
1929年以降の大恐慌による社会経済の混乱であり、当時の大企業ですらバタバタ倒産した数年間の苦しみを味わい、大恐慌による経験から多くの事を学び、いかなる経済状態でも企業が恒久的成長する源を探し求めた。たどり着いたのが経営理論に基づく経営である。
我々の第一の責任はお客様、第二は社員、第三は地域社会に対して、第四は株主という状況に対して、ロバート・ウッド・ジョンソンJrが取締役会にこれをかけます。
これを不服とするものは、他の会社に移ってもらって結構だという堅い決意を持って、この4つの信条をうたって現在に至るという訳でございます。
●我々の第一の責任は(顧客)
我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。
顧客一人一人のニーズに応えるにあたり、我々の行うすべての活動は質的に高いのでなければならない。
適正な価格を維持する為、我々は常に製品原価を引き下げる努力をしなければならない。
顧客からの注文には、迅速、かつ正確に答えなければならない。
我々の取引先には、適正な利益をあげる機会を提供しなければならない。
●我々の第二の責任は(社員)
全社員―世界中で共に働く男性も女性も、に対するものである。
社員一人一人は個人として尊重され、その威厳と価値が認めらければならない。
社員は安心して仕事に従事出来なければならない。
待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。
社員が家族に対する責任が十分果たす事ができるよう、配慮しなければならない。
社員の提案、苦情が自由にできる環境でなければならない。
能力ある人々には、雇用、能力開発および昇進の機会が平等に与えなければならない。
我々は有能な管理者を任命しなければならない。そして、その行動は公正、かつ道義にかなったものでなければならない。
●我々の第三の責任は(地域社会)
我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。
我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。
我々は社会の発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。
我々が使用する施設を常に良好な状態に保ち、環境と資源の保護に努めなければならない。
●我々の第四の、そして最後の責任は(株主)
会社の株主に対するものである。
事業は健全な利益を生まなければならない。
我々は新しい考えを試みなければならない。
研究・開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。
新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。
逆境の時に備えて蓄積をおこなわなければならない。
これらすべての原則が実行されはじめて、株主は正当な報酬を享受する事ができるもの、と確信する。
ユニークな社訓なんですけれども、
*『堀場製作所』 京都市/計測機器メーカー/西暦1945年創業(堀場雅夫 創立者)
堀場雅夫さんはロータリアンで、2780地区でもお話を聞いたことがございます。 社訓は「おもしろおかしく」、これだけです。
常に「やりがい」をもって仕事に取り組むことで、人生の一番良い時期を過ごす「会社での日常」を自らの力で「おもしろおかしく」ものにして、健全で実り多い人生にしてほしいという前向きな願いが込められています。
そのためには会社は「おもしろくおかしく」働ける舞台を提供します。
そこで従業員が「おもしろおかしく」仕事をすれば、発想力や創造力が増すと共に、効率も上がり企業価値が高まります。
その結果、お客様、株主、サプライヤー(売主)、そして社会とWIN−WINの関係を築きます。
●5つの‘おもい’
「おもしろおかしく」を従業員が自己実現していくために、HORIBAでは以下の「5つの‘おもい’」を強く持ち、実践していくことを掲げます。
・誰も思いつかないことをやりたい
・技を究めたい
・自分の仕事や会社を誰かに伝えたい
・人や地球の役に立ちたい
・世界を舞台に仕事をしたい
色々な家訓、社是、遺訓等を述べてきましたが、その中で訴え続けているものは「感謝」「勤勉」「工夫」「倹約」「貢献」の5つに分けられると思います。
「感 謝」
「売り手よし、買い手よし、世間よし」近江商人の三方よしの精神に基づき、お客様や自然の恵み、祖先に対する感謝の念を持ち、すべてに心を込めて商いをする感謝の心です。
「勤 勉」
昔から「お天道様に恥ずかしくない生き方をしなさい」という恥の考えがありました。
正直でまっとうな商売を心がけ、地道に努力していくことにより、世間から認められ、現在のコンプライアンス(法令順守)経営を先取りしています。勤勉努力の精神の心です。
「工 夫」
品質を最優先課題として、それを守り抜くこと、技術を継承する事を前提に、工夫を重ね、常に時代に合わせて改良をし続ける創意工夫の心です。
「倹 約」
資金面に関して、無理無駄を省き、投機や暴利に走らない、保証人にならない、やたらに拡大しない、倹約の心です。
「貢 献」
家族、地域、社会など共同社会に貢献する事や、公共精神を持つことなど、高い使命感を持ち、社会や文化の発展に尽くす心です。
・・・以上の様に、日本国内では既に江戸時代を中心とした『職業奉仕』の思想が根付き、今日に至っている事を申し上げる事ができると思います。
そろそろ、まとめに入ります。
「ドラッカーに先駆けた江戸商人の思想」の著者・平田雅彦さんは、
信用を重んじ、浮利を追わず、「これくらいの事は世間では誰でもするから構わない」という考えは大嫌いである。「売り手よし、買い手よし、世間よし。」これらは江戸時代の商家の家訓の思想です。これらの家訓を持つ商家は、いずれも、今も企業として存在しています。
共生の思想は相手を大きく受け入れる寛容の精神であり、共生の思想であります。
地球を取り巻く環境危機が切迫の度を深めてきている現在、人類は一刻も早く、共生の理念に目覚めねばならない。
・・・と言われております。
そして、この記事はお読みになったかと思いますが、今回の東日本大震災で被害を受けられた中に、読売新聞2011年4月2日付けで『老舗しょうゆ店再出発』という記事があります。
津
波で壊滅的被害を受けた岩手県陸前高田市で、200年(文化4年1807年創業)の“のれん”を誇る老舗しょうゆ醸造会社『八木沢商店』が、4月1日に営業を再開した。
ベテラン社員一人を失ったが、新人社員を迎え、社一丸で愛された味の再興を目指す。
まずは「生きる」が経営方針。
誠心誠意、がんばろう。
河野通洋社長(37歳)が、従業員45名のうち出社可能な約30人と新人2人に対し、力のこもった言葉を投げた。
震災後初の朝礼。
海に近い社屋は無残な姿に変わり果て、市内の自動車学校の一角に仮事務所を設けての再出発だった。
この「一大事は若い人間の手」で、と前任社長に社長交代を直訴し、この日に就任した。
「食を通して感謝する心をひろげる」など、社是を掲げられた。
従業員の1人が、社から3キロ以上離れたがれきの中から見つけ出したもの。
あふれる涙で見つめた。
特産の気仙杉のもろみ樽で仕込むしょうゆは香ばしいと人気で、全国から注文が来た。
土蔵は街のシンボルだった。
30年働いてきた営業販売課長の佐々木敏行さんが、消防団の任務で湾の水門を閉めに走り、帰らぬ人になったのが何より痛恨だった。
蔵、樽、大豆も失った。
ただ朗報もある。
流された樽の一つが見つかり、もろみが採集できたのだ。
もろみには自慢の味を生んできた酵母菌と乳酸菌が生きているはず。
菌が培養できれば、数年後、またあのしょうゆができる。
うちが元気な姿を見せたら、この地区から俺も頑張ろうという会社がきっと出てくる。
父子の願いは同じだ。
大災害を受けた状態の中でも、職業奉仕のエネルギーが一杯詰まった東北地方の会社があることを知っていただきたいと思いました。
最後に、神埼パストガバナーからいただいた資料の中から、
神守源一郎パストガバナー(昭和39年第358地区ガバナー)が、昭和58年に京都東ロータリークラブ第1326回例会の卓話において話をされています一節をご披露いたします。
「ロータリーでいう職業奉仕」テーマの中で「職業を通じて別の奉仕をするのではなくて、その職業を立派にすること、即ち、営業努力をしてその職業を繁栄させ、しかも公害の無い、又近隣の人に迷惑をかけない、その企業がその町に在る事が、その町の誇りでもあるような企業にする事が職業奉仕なのです。」
・・・ということを唱えております。
以上、『長寿企業における職業奉仕の検証』というお話を、この辺で終了させていただきます。
ご静聴ありがとうございました。
(拍手)
【茅ヶ崎湘南RC:神崎正陳】
大変、変わった話をしてもらいました。
何か質問はありますか?
これだけの日本の企業の古い話を、まとめて聞くことは無いですね。
後で質問があればと思います。
それでは休憩にいたします。