5.まとめ
リーダー 神崎 正陳 (茅ヶ崎湘南)
意見交換は十分な議論が尽くせませんでしたが、時間が迫ってきました。
最後に、若干の私の考えについてお話しします。
冒頭にご紹介した『奉仕こそわがつとめ』という本は、かつてはロータリー・クラブに入会する際に必ずもらって、職業奉仕の教科書のように読まされたものです。
RIは最近では、この本を配布することは愚か、販売すらもしなくなりました。
「職業奉仕」という言葉は、今なお標準ロータリー・クラブ定款、手続要覧で使われています。
決して、死語でも歴史的語彙でもありません。
現在でもこの本を読み、その精神を理解するということは、職業奉仕を知るためのひとつの大切な方法です。
この本の翻訳については意見もありますが、ぜひお読みになることをお勧めします。
ロータリー文庫に注文すれば、コピーを送ってくれます。
この本の原題は“Service is my Business”です。
中学生の英文解釈なら、「奉仕は私の職業」ということになりましょう。
ホジソンは、“Business”と“Occupation”を微妙に使い分けていますので、訳者は“Business”を「つとめ」と訳したのでしょうが、中学生流に「奉仕こそ我が職業」と理解してもあながち間違いではないと思います。
職業人が己の職業は、職業に関わるすべての人たちに対する大きな貢献(奉仕)であることを意識し、それに基づいて行為することは、まさに職業奉仕の実践に他ならないからです。
ただ、それを難しくしてしまった原因については、別の機会に考えることにしましょう。
もうひとつ、職業奉仕を文学の面から眺めてみましょう。
この本の扉に、19世紀の文豪チャールス・ディケンズの「クリスマス・キャロル」の中の、次のフレーズが引用されています。
「職業ですって!人類が私の職業でした。慈善“Charity”、恵み“Mercy”、堪忍“Forbearance”そして博愛“Benevolence”はすべて私の職業でした。商売上の取引などは、私の職業という広範な海洋の一水滴にすぎないものでした。」
ポール・ハリスの没後、妻ジーンが回想文をザ・ロータリアンに載せています。
その中に次のような1節があります。
「……結婚後新築の家ができて、ポールが一番最初にやったことは、ディケンズ全集を買うことでした……。」
ポールが己の人生をかけて実践してきた「ロータリー」を解く鍵はディケンズにあると言ったら大げさに過ぎるでしょうが、ロータリー運動とディケンズとの関係は深いものあると私は考えています。
「職業は奉仕だ」という考え方は、大切なことだと思いますね。
ロータリアンの生き様を示しているのですから。
良きロータリアンたるためには、いつでも職業と奉仕との関係について考え、反省するという姿勢が大切なのだと思います。
その関係をどうとらえるかは人により様々です。そこに難しさがあるのですが、そこをいつも考えることそのことが、大切なことなのではないでしょうか。
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